編者のことば


 西田幾多郎の哲学精神を源流とする思想家たちが、歴史的には比較的短期間に、驚くほど豊かな思想山脈を形成した時代があった。この思想山脈を、その舞台となった場所にちなんで「京都哲学」と名づけることができる。それは、質的な高さと、量的な壮大さにおいて、日本近代精神史のなかにそびえている。それだけではなく、また西洋近代の精神史とも深く交叉し競い合うものとして、世界的視野で測量されるべき出来事でもある。『京都哲学撰書』はこのような思想山脈の代表的な作品を撰び、日本および世界の思想史の観点から解説を加えて、現代に蘇らせようとするものである。
 ちなみにこの『京都哲学撰書』は、西谷啓治博士の命名によって出発した『燈影撰書』を前身とし、これを発展的に継ぐ意味を持っている。西田幾多郎の諸作品は『西田哲学選集』(燈影舎刊)に譲り、本撰書では、西田と精神的に親近な関係にあった他の思想家たちの諸作品を収録する。第1期は15巻をかぞえ、第2期、第3期の諸巻がこれらにつづく予定である。本撰書が過去の思想遺産の復刻にとどまるのではなく、現代世界の思索土壌を豊かにするものであることを期待する。


大峯 顯・長谷正當・大橋良介