編者のことば


西田哲学の再把握と新生

 西田幾多郎の思想に新たな光を当てて捉らえ直す時期が到来している。それは西田の没後五〇年が過ぎたという回顧的な意味からではない。現代における哲学の課題そのものが、西田哲学の理解に新たな光を要求し、またその光そのものなのである。現代哲学のコンテクストの中で西田の思想を浮かび上がらせるとき、そのことが判明するであろう。
 この選集は、上のような思想状況に呼応して意図したものである。すなわち西田の著作を現代哲学の諸分野に沿って配列しなおし、それぞれの分野において西田哲学が有する「同時代性」を、場合によっては新しい思想方向の「可能性」を、浮き彫りにしようとするものである。これによって西田哲学は、単なる過去の思想遺産という色彩を脱ぎ捨て、現代哲学の最前線で光彩を放つものとして立ち現われるであろう。
 この選集が西田哲学の再把握と新生に、ひいては現代哲学への寄与につながっていくことを、編者としては願う次第である。


 大橋良介・野家啓一